drakiti63の日記

私の人となり

お待たせ、韓国短編小説「夕立」後編第3部

少女がささやくように

こちらに入って座ればと言った

大丈夫だと言った

少女が再び

入って座るように言った

仕方なく後ずさりをした

そのせいで

少女が抱いている花束が

揉みくちゃになった

しかし

少女は構わないと思った

雨に濡れていた少年の

体の匂いが

ムッと鼻を覆った

しかし

顔を背けなかった

かえって

少年の体の温もりで

震えていた身体が

少し和らぐ感じだった




騒々しかった

キビの葉の音が

ピタッと止んだ

外が明るくなった

キビ束の中から抜け出した

遠くはない

前方の日差しが

まぶしく降り注いでいた

小川のあるところまで来ると

物凄く水が溢れていた

色までも

かなり赤い泥水だった

飛び越えることが出来なかった





少年が背中を

回して向けた

少女が

何も言わずに背負われた

裾を上げた

少年の股引まで

水が浸み上がっていた

少女は

”キャー”と

声を上げながら

少年の首に抱きついた

小川の岸辺に着く前に

秋の空は

いつ雨が降っていたかと

思われるように

雲一つ無く

藍色に晴れ上がっていた




その後からは

少女の姿を見かけなくなった

毎日のように

川辺に走ってきてみても

見かけることは出来なかった

学校で休み時間に

運動場を見回ってもしてみた

誰にも知られないように

5年生の女子クラスを

のぞいたりもした

でも見えなかった

その日も

少年のポケットの中の小石を

いじりながら

小川へ出かけた

するとこちらの小川の土手に

少女が座っているではないか





少年は本当に

胸がドキドキした

”しばらく病気だったのよ”

何故か

少女の顔がやせているようだった

”あの日夕立にあったからじゃないの?”

少女が黙って

首を縦にふった



”もうすっかり治ったの?”

”まだ・・・・・”

”それなら寝てなくっちゃ”

”とても退屈で出て来たのよ

 本当にあの日は

 楽しかったわ

 でもあの日

 何処でこんな色に染まったのか

 よく消えないの”

少女がピンクのセーターの前裾を

見下ろした

そこに黒くて

赤っぽい泥水のような物が付いていた




少女が

そっとエクボを浮かべながら

”これ何の色だと思う?”

少年は

セーターの前裾だけを見つめていた

”ああ思い出した

 あの日

 小川を渡りながら

 私がおんぶされた事があったでしょう?

 その時

 あなたの背中から移った色よ”

少年は顔が

パッと赤くなるのを感じた





別れ道で少女は

”あのー今朝

 私の家でナツメを取ったの

 明日

 法事なので・・・・・”

ナツメ一握りを渡した

少年はどぎまぎする

”味見してごらん

 家のひいお祖父さんが

 うえたというんだけど

 とても甘いのよ”





少年は両手を

曲げて出しながら

”とても太ってる実だなあ・・・”

”それからね

 私の家

 こんどの法事のあと

 しばらくして

 家を人手に渡すことになったの”