drakiti63の日記

私の人となり

韓国短編小説「夕立」後編第2部

”まるで

 藤の花みたいだわ

 ソウルの私たちの学校に

 大きな藤の木があってね

 あの花を見ていると

 藤の木の下で遊んでいた

 友達を思い出すわ”

少女は静かに立ち上がって

斜面になった所へ行く

ツボミが沢山ついた枝を

取って切り始める

なかなか切れない

思いきっり力を込めると

そのまま滑ってしまう

くずのつるをつかんだ






少年が驚いて

走って行った

少女が手を差し出した

手を握って引き上げながら

少年が自分が

折ってやれば良かったのに

と後悔した

少女の右膝に

血の滴がしたたり落ちた

少年は思わず擦り傷に

唇をもっていって

吸い始めた

そうして

何を考えたのか

フッと立ち上がり

あっちの方へ

走って行った





しばらくして

息を切らして

戻って来た少年は

”これを塗れば治るよ”

松脂を擦り傷に

擦り込んで塗って

駆け足で

くずのツルがある場所に

降りて行き

花が沢山ついた

何本かの枝を

歯で噛み切って

上がってくる

そのようにして

”あそこに子牛がいるよ

 そっちへ

 言ってみよううよ”

黄色っぽい子牛だった

まだ花輪も

通していなかった




少年が牛の紐を

短く持って

背中を掻いてやる振りをして

ヒラリと飛び乗った

子牛がピョンと回る

少女の白い顔が

ピンクのセーターが

藍色のスカートが

抱いている花と

一緒になって入り乱れる

全てが一つの

大きな花束のようだ

めまいがする

でも

絶対に降りないぞ

誇らしい気分だった

これだけは少女が

真似することのできない

自分だけが出来ることなのだ







”お前達

 ここで何してるんだ?”

一人の農夫がススキの間を

登ってきた

子牛の背中から飛び降りた

幼い子牛に乗って

腰が傷ついたらどうするんだ

と叱られるような気がした

ところが

頬髭の長い農夫は

少女の方に一度目をやると

そのまま子牛の紐を解きながら

”早く家に帰りなさい

 夕立が来るぞ”

本当に

黒雲の一片が

頭の上に来ていた

突然

四方が騒々しくなった様だ

風がサーと

音を立てながら

通り過ぎる

あっという間に

周りが

紫色に変わった

山を降りて来ると

柏の木の葉から

雨の滴り落ちる音がする

大粒の雨であった

首筋がゾクゾクとした

すると途端に

目の前を

塞ぐ様な雨筋






雨の霧の中に

見張り小屋が見えた

そこへ行って

雨を避けるしかない

しかし

見張り小屋は

柱が傾いて

屋根も

ボロボロに裂けていた

それなりに

雨が漏らないところを

選んで少女を

入れるようにした

少女の唇が真っ青になった

肩をしきりに

震わせていた





木綿を重ねた

上着を脱ぎ少女の肩に

掛けてやった

少女は雨に濡れた目で

一度見つめただけで

少年がするまま

じっと黙っていた

そして

抱いてきた花束の中から

枝が折れて

花が曲がって折れた

花房を選び

足元に捨てるのだった

少女が入って

立った所も

雨が濡れ始めた

もう

そこで雨を凌ぐことはできなかった





外を見ていた少年が

何を考えたのか

キビ畑の方へ走っていく

積んで置いたキビ束の中を

探ってみた

そこから

こちらへ向かって手招きをした

キビ束の中は

雨は漏らなかった

ただ

暗くて狭いのが悪かった

前の出て座っている少年は

雨に

当たらなければならなかった

そうしている

少年の肩から

湯気が立ち上った