drakiti63の日記

私の人となり

韓国短編小説「夕立」後編第1部

土曜日であった

小川へつくと

数日間、見えなかった少女が

向こう側の水際に座って

水遊びをしていた

知らない振りをして

飛び石の橋を

渡り始めた

暫く前に

少女の前で

一度失敗しただけで

今まで広い道を

通るように渡っていた

飛び石の橋を

今日は注意深く渡った




”ねえ”

聞こえない振りをした

土手の上に登って立った

”ねえ、これ何という貝?”

自分も気がつかないうちに

振り向いていた

少女の澄んだ

黒い瞳と向かい合った

素早く少女の手のひらに

目をおろした

”絹貝”

”名前もとても綺麗だわ”





分かれ道に来た

ここから少女は

下道の方へ

約三里くらい

少年は反対に

約十里近い道を

行かなければならない

少女が歩みを止めて

”ねえ、あの山の向うに

 行ったことある?”

野原の先を指差した

”ないよ”





”私たち、行ってみようか?

 田舎へ来ると一人ぼっちで

 我慢できないの”

”あんな風に見えるけど

 遠いんだよ”

”遠いと言っても

 どれくらい遠いのかしら?

 ソウルにいた時は

 ホントに遠い所まで

 遠足に行ったわ”

少女の瞳が

今にも

”馬鹿、馬鹿”というような

気がした

田んぼのあぜ道に

入って行った

秋の稲刈りをしている

側を通っていった




案山子が立っていた

少年は案山子の綱を

振らした

雀が数羽

飛び立った

”そうだ

 今日は早く家へ戻って

 近くの田んぼの雀を

 見張らなければならないんだ”

という思いがあった

”まあ、面白いわ!”

少女が案山子の綱を

つかんで

振り回した

案山子がしきりに

揺ら揺らしながら

踊りを踊った

少女の左の頬に

静かに

エクボができた





あっちの方にも

案山子がまた立っていた

少女がそちらへ走って行った

その後を

少年も走った

今日のような日は

早く家に戻って

家事を手伝わなければ

という思いを

忘れてしまおうとでも

するように




少女の側を

掠めるように

ただ走った

バッタがピシッと

顔にぶつかる

藍色に思いっきり晴れた

空が

少年の目の前で

回っている

めまいがする

あの鷲め、あの鷲め

あの鷲の奴めが

グルグル回っているからだ





振り返ると

少女はいま自分が

通り過ぎて来た

案山子を

揺らしていた

さっきの案山子よりも

揺れていた

田が終わった所に

小川が一本流れていた

少女が先に

飛び越えた

そこから山の麓までは

畑があった

キビの束を積んでおいた

畑の先端を

通り過ぎた




”あれなあに”

”見張り小屋だよ”

”ここのまくわ瓜、おいしい?”

”おいしいよ

 まくわ瓜の味も

 いいけど西瓜の味は

 もっと美味しいよ”

”一つ食べて見たいな”






少年はまくわ瓜の苗床に

植えた大根畑に入って

大根を二本根元を

抜いてきた

未だ根元が

未成熟だった

葉を捻って

投げ捨てた後

少女に一本渡した

そして

このように食べなければ

いけないというように

先に大根の頭を

一口かじってから

手の爪で

グルッと皮を剥いて

がぶりとかんだ






少女もその通りにした

しかし

三口も食べられず

”あっ

 辛くて

 肥やし臭い!”

と言いながら

投げ捨ててしまった

山が近付いた

紅葉の葉が

瞳に染みた






”やあー”

少女が山に向かって

走って行った

今度は少年が

追いかけては行かなかった

それでも

たちまち少女より

ずっと多くの花を手折った

”これ野菊

 これ萩の花

 これ桔梗花・・・・・・・・”

”桔梗の花が

 こんなに綺麗だとは

 知らなかったわ

 わたし紫が好きなの!

 ・・・・・でも

 この洋傘の形をした

 黄色い花はなあに?”

”女郎花(おみなえし)”




少女は女郎花を

洋傘を差すようにしてみせる

ちょっと

上気した顔に

微かにエクボを

浮かべながら

再び

少年は花を

一束折って来た

生き生きとした

花だけ選んで

少女に手渡す

しかし

少女は

”一つも捨てないで”

山の中腹まで

登って行った





向う側の沢の方に

寄り添うように

草葺の家が

数軒集まっていた

誰が言い出した

わけでもないのに

岩に並んで

腰掛けた

やけに辺りが

静かになったようだった

暖かな秋の陽射しだけが

乾きかけている

草の匂いを

振り撒いていた

”あれはまた

 何と言う花なの?”

相当に斜面になった所に

ツルが絡まって

花を咲かせていた

では、また、明日をお楽しみに