drakiti63の日記

私の人となり

韓国短編小説「夕立」前編

少年は小川のほとりで

少女を見ると直ぐに

ユン・チョシ家の

ひ孫のということがわかった

少女は小川に手を浸して

水遊びをしているところだ

ソウルでは

こんな小川の水を

見られないかのように




もう何日間も少女は

学校からの帰り道で

水遊びをしていた

ところが昨日までは

小川の岸で

遊んでいたのだが

今日は飛び石の橋の真ん中に

座って遊んでいた



少年は小川の土手に

腰掛けてしまった

少女が道を退いてくれるのを

待とうというのだ

幸いにも通りかかる人がいて

少女は道を

退いてくれた





次の日は

少し遅くなって

川辺に出かけた

この日は

少女が飛び石の橋の真ん中に

座って、顔を洗っていた

ピンクのセーターの袖を

たくし上げた

腕と襟首が

とても白かった

暫く、顔を洗っていたが

とても白かった

暫く顔を洗っていたが

今度は水の中を

じっと覗き込んでいる

顔でも映して

見ているのだろう

いきなり水を

しっかりすくい上げた

小魚でも

通り過ぎるのかのごとく




少女は少年が

小川の土手に

座っていることを

気づいているのか、いないのか

ただ

素早く、水をしっかりと握っている

しかし、その度に

徒労である

そうしているのが面白いらしく

しきりに川水をすくい上げる

昨日のように

小川を渡る人がいなければ

道を退けてくれない様子だ




そうしているうちに

少女は、水の中から

何かをつかみ出した

白い小石だった

それから、スッと立ち上がって

ピョンピョンと

飛び石の橋を

橋って渡っていった

全部を渡り終えると

フッとこちらを振り返りながら

”この お馬鹿さん”

小石が飛んできた

少年はわけも分からず

サッと立ち上がった




短い髪を

激しくなびかせながら

少女は、ひたすら走る

葦原の小道の中に

入って立ち止まった

後ろには

清涼な秋の日差しの下に

映える葦の花だけ

もう、あの辺の葦畑に

少女が、現れるだろう

とても長い時間が

過ぎたように思った

けれども

少女は、現れない

背伸びをしてみた

それからも

かなりの時間が

経ったように

思われた




ずっと向こうの

葦原の先端で

葦の花が

一握りほど動いた

少女が葦の花を

抱いていた

そして、今度は

ゆっくりとした

歩き方だった

とりわけ澄んだ

秋の日差しが

少女の足の花の先から

光っていた

少女ではなく、葦の花だけが

野道を

歩いていくようだった

少年はその葦の花が

本当に

見えなくなるまで

そのまま立っていた

ふと

少女が投げた小石を

見下ろした

水気は、乾いていた

少年は小石を拾って

ポケットに入れた




次の日から

もう少し

遅くなって

川辺に出かけた

少女の姿は、見えなかった

幸いだった

しかし、不思議なことがあった

少女の人影が

見えない日が

続くほど

少年の胸の片隅には

どこか

虚しさが

忍び込んでいた

ポケットの中の小石を

いじくる癖が

できてしまった





こうしていたある日

少年は、前に

少女が座って

水遊びをしていた

飛び石の橋の真ん中に

座ってみた

水の中に手を浸した

顔を洗った

水中をのぞき込んだ

黒く日焼けした

顔がそのまま

映っていた

嫌だった





少年は両手で

水の中の顔を

力を込めて、掴んだ

何度も、掴んだ

そうしているうちに

急にはっと、驚いて

立ち上がってしまった

少女がこちらの方に

渡ってくるではないか

”隠れて僕が、やってること

 のぞいていたな!”

少年は、駆け出した

踏み石を踏み違えた

片足が水の中に落ちた

もっと走った



身を隠す場所があってくれたら

良かった

こっちの道には

葦原も無い

蕎麦畑だ

前には、匂わなかった

蕎麦畑の花の匂いが

ツンと鼻を刺したと思った

眉間がくらっとした

少し塩辛い液体が

口の中に

流れ込んだ

鼻血だった

少年は、片手で

鼻血を拭きながら

そのまま走った

どこからか

”馬鹿、馬鹿”

という声が

しきりに

追いかけてきているようだった

  明日へ、続く